はじめに
INTRODUCTION
「沼の底、なぞというと、甲府もなんだか陰気なまちのように思われるだろうが、事実は、派手に、小さく、活気のあるまちである。
よく人は、甲府を、『擂鉢(すりばち)の底』と評しているが、当っていない。甲府は、もっとハイカラである。
シルクハットを倒(さか)さまにして、その帽子の底に、小さい小さい旗を立てた、それが甲府だと思えば、間違いない。
きれいに文化の、しみとおっているまちである。」
作家・太宰治が短編小説「新樹の言葉」の冒頭で、昭和初期の甲府をこのように表現しています。
ここに描かれているように、江戸時代から戦前まで甲府市は、民間の劇場や寄席が立ち並ぶにぎやかな街で、役者や芸人達に「甲府の客を満足させられなければ東京、大阪での公演は打てない」と言わせるほど人々の間に文化が浸透していました。
甲府の観衆、聴衆を納得させる作品を世に問うため、長く山梨にとどまり修行をした役者、芸人、作家も数多くいたと伝えられています。
しかし、大戦の空襲で市の7割が焦土と化した甲府市に、民間の劇場や文化施設が長く復活することなく、いつしか「舞台芸術を見定め、情報を発信する街」の風格は失われていきました。
『ミュージカル シンデレラ』は、3年前、山梨大学の学生らが自主制作し、作品を目にした県出身の若手アーティストが、地域の文化を活性化させる素材となりえると考えた作品です。
本公演では、その作品をさらに磨き上げ皆様に初披露いたします。
山梨県出身のアーティストとコラニー文化ホールがタッグを組み、山梨でいつまでも演じ続けられる新たな作品づくりと、客席も、舞台も、笑顔があふれる山梨に挑戦します。
ぜひご期待ください!
Ⅰ.オール山梨産ミュージカルの誕生
脚本・作曲からキャスト、舞台の裏方スタッフに至るまで山梨中心のメンバーで構成されています。
都内や県内で精力的に活動しているメンバーや目下、勉強中のアーティストの卵たちが集結しました。
制作スタッフにおいても県民で構成され、プロの指導により舞台づくりのノウハウが山梨に蓄積されます。
Ⅱ.若手アーティストがふるさとへ恩返し。
名作童話を新作ミュージカルで上演
平均年齢約29歳。ジャンルの垣根を超え、声楽家、俳優、ダンサー、器楽演奏家、舞台マネージャーなど若きアーティストやパフォーマーが集結しました。
それぞれの得意分野を活かし、相乗効果によるパフォーマンス・作品の質の向上を目指します。
作品は、世代を超えてファンを持つ名作童話『シンデレラ』をモチーフにした新作ストーリーのミュージカルです。
Ⅲ.世界の舞台を熟知する演出家を登用。
プロの監修のもとで本格ミュージカル化
当作品の原作は、山梨大学学生らのオリジナル作品でした。
この作品を見た山梨県出身のアーティストが、作品の可能性を感じコラニー文化ホールに紹介したことがきっかけです。
脚本・久保田里奈、作曲・伊藤駿も自らの作品が山梨に広がっていくのならと快諾し、プロジェクトがスタートしました。
作品は、山梨を代表する舞台作品を目指し、どこに出しても恥じない作品に育てようと、演出家・三輪えり花さんを招聘しました。
三輪さんは、舞台の本場・英国で俳優、演出の修業を積み、世界の舞台を熟知した演出家です。現在は、東京藝術大学の他、多くのアーティストの育成にも務めています。
今回は、製作の初期段階からプロジェクトに関わっていただき、作品づくりやキャストへの指導、公演の制作手法について監修していただいています。
Ⅳ.山梨県のメーカーのオリジナル和紙を使った舞台衣装
今回の見どころのひとつは、地元の和紙メーカーのオリジナル和紙素材を活用した舞台衣装です。
市川三郷町の和紙製造卸・㈱大直のブランド『SIWA | 紙和』にも使用されている素材「ナオロン」を使用し、舞台衣装や小道具を製作します。
通常、和紙の強度は舞台衣装の素材として利用するには不十分なのですが、「ナオロン」は一般的な和紙よりも高い強度を持つため、舞台衣装としての活用も可能となりました。
Ⅴ.地域活性化の核となる中核的存在へ
舞台芸術は、子どもから大人までが一緒に「場」と「時間」を共有し、感動を共にすることができます。プロジェクトでは、メンバーそれぞれが地域を牽引する力となり、作品を生み出し、それを通じて新しいコミュニティの形成に努めてまいります。
「山梨を笑顔で満たし、もっと元気に!」
地域活性化の核となる、そんなプロジェクトを目指しています。
[1]山梨の文化を牽引する人材を育て、舞台芸術を楽しむ機会にあふれた山梨づくりを目指します。
[2]作品を利用したアウトリーチ(外部への持ち出し公演)を積極的に行い、感動や関心、取り組む喜び、新たな出会いを広げていきます。
[3]山梨から全国へ、多くの方に幸せを届ける・・・プロジェクトは進化をつづけていきます。